「君が、ベルちゃんとポートくん?」

この世の終わりのような顔をした僕らの前に、一人の若い警察官が現れた。
少し大きめの制服と、茶髪と整った顔立ちは一言で言うと真面目とか、そんな言葉が似合っていた。

「僕は、ジャック。
オレンジジュースを持ってきたけど、飲むかい?」

ジャックは、僕らの前に2つのコップに入ったオレンジジュースを差し出す。
僕らは、”ありがとうございます“と言ってジュースを受け取った。

ベルは、無言でオレンジジュースを飲み込むとジャックに向かい言った。

「お母さんはどうなったの?」

「残念だけど……」

ジャックは、目を伏せた。
ここから先を言うべきか、言わないべきか。

「分かってるわよ、そんなの。
お母さん、助からなかったんでしょ!!?」

「ベル、落ち着いてったら。」

「落ち着くって、アンタなんでそんなに冷静でいられるのよ?
お母さんが死んだのよ?! 信じらんない、バカなんでしょ!!」

「ベル!!」

僕はベルを怒鳴ってしまった。
今までにないくらいの大声を発したから、ベルは縮こまっていた。

「ベル、しっかりして。
お母さんが死んで乱心してるのは分かるけど、ベルもベルだよ。」

ベルは、黙ってしまった。
口を噤み、眠るように目を閉じた。
そんな僕らのやりとりを見ていたジャックは、静かに去った。

今の僕達に、何か言いたいことがあったみたいだけど。
今は言わない方が良いと、判断したのだろう。


「母さん……。」








今の僕は、まだ知らなかった。
お母さんが死んだ以上の恐ろしい恐怖が僕たちを待ち受けていることを。