「あれ、ポートくんにベルちゃん。 どうしたの?」

下の階には予想通りジャックが居た。 彼はここ最近は僕らを心配してかボランティアとして僕らのご飯や身の回りの世話を手伝ってくれている。
警察の制服を脱いだ彼は、紛れもなくどこにも恥じることのない青年だった。 変な意味ではないが、同性の僕が見てもかっこいいと思えた。

「ベルと僕、お腹空いちゃって。 何かご飯食べたいなぁって。」

すると、ジャックの顔がみるみるうちに明るくなっている。 僕らがこう言ってくれるのを待っていたのだろう。

「あ! 待ってて!! 今なにか作るから!
何がいい? 君たちの好きなものを作るよ!!」

ジャックは、腕まくりをしてキッチンを動き回る。

「あっ!!」

その内、ジャックはキッチンの段差に躓きよろけた。

「…くくっ」

僕とジャックは驚きで顔を合わせる。

「あはははっ!!」

ベルが大笑いしていた。 とても楽しそうな顔で。
一瞬、おかしくなったか? とも思っていたがベルは本当に面白がっている…。 ジャックには悪いけど。
僕は、ホッと一安心した。

「あはは、ベルちゃん。 笑ってくれてよかった。」

ジャックは、ベルを妹のような顔で見つめる。
ベルは、笑い涙を拭いてジャックの顔を見ている。

「ポートくんは元気そうだったけど、ベルちゃんはなかなか心を開いてくれないから心配してたんだけど…。
安心したよ。」

ジャックはにこりと笑う。 憎しみも邪心もこもっていない穏やかな笑顔に僕は顔が熱くなる。
ベルの顔を咄嗟に見ると、顔が真っ赤だ。

正直、ジャックをあまり信じておらず邪険にしていた僕らだがジャックはそんな僕らの気持ちを分かってくれていたのかもしれない。

「あ! ごはんだよごはん!!」

「僕、ハンバーグ食べたい!」

「あたし、オムライス!」

今日は久々にいい気分だ。 ジャックのお陰だ。
ベルもジャックを信用したみたいだし。 ジャックは僕らのお兄ちゃんみたいな存在になった。