「ねぇ、ポート。 これからあたしたちどうなるのかな?」

ベルは僕の顔も見ないで暗い声で言った。

母さんが死んでから、もう2週間過ぎた日の事だった。

ベルも僕も、学校には行けていないし。 友達や先生も僕らに無理強いはさせなかった。

「そんなのわからないよ。」

僕は、ラジオの音量を少しだけ下げてぼんやりと言った。 ちゃんとベルは聞き取れただろうか?

「そうよね、あんたに聞くんじゃなかった。」

じゃあ、なんで聞いたんだよ。 僕はイライラしてきた。
別に、ベルの心が不安定なのは分かっている。 最近のベルはとにかくおかしい。
空を見上げては何かぶつぶつ言っているし、ラジオの音声を真似して復唱している。

「ベル、君少しおかしいよ。」

「どこが?」

「どこって、ほとんど。」

ベルは、振り返って僕の顔を睨みつける。 久しぶりにベルの顔を見たような気がした。
痩せこけて、肌も白くなっている。 ほとんど生気が感じられない。

「ベル、何か食べようよ。」

僕はなんとなく言ってしまった。 母さんだけでもなく、ベルも失いそうな気がしたからだ。
でも、そんな僕の気持ちなんてわからないだろう。 ベルは首を横に振る。

「ベル、このままじゃキミ死んじゃうよ。」

ベルの手首をぐいと掴んで、無理矢理立たせようとした。なんとか立ち上がったベルの体は、驚くほど軽かった。
いつもは、頑固でうるさいけれど頼りがいのあるベルの面影なんて微塵も感じられなかった。

「ベル、ご飯食べに行こう。 話は聞くからさ。」

僕は、ベルを下の階へと連れて行こうとした。 下の階にはジャックが居るはず。 なにかご飯をご馳走してくれるだろう。
僕は、ベルに合わせてゆっくり階段をくだった。