母さんが死んでしまってから、約一週間。
僕とベルは、未だに心の回復が出来ていなかった。ベルは一日中ぼそぼそと何か呟いていて、僕も一人で居ると母さんの事ばかり考えてしまう。
でも、ベルの方がもっと辛いんだろう。

ベルは母さんが大好きだったから、母さんが死んだショックは測りしれない。僕が余計な事を言ったら、ベルだってどうなるか分からなかった。

僕は、学校に行っては居るものの皆どこか僕に気を使っているカタチをとっていて、ある意味で居心地がわるい。母さんのことを忘れたかったのにこんな事されたら嫌でも思い出してしまう。
ミリーもフユキも、僕にあまり負担をかけさせるような言動は控えているようで、遊びにも誘ってくれなくなった。

僕は学校に行くのも疲れてしまって、警察が用意した家でなんとなくラジオを聞いている毎日だった。
ラジオからは、色々な情報が流れていた。 最も流れていたのは、都市部で流行っている病気の事くらいで、その他は昨日の事件がどうとか野球選手がどうとか、そんなところだった。でも、いい暇つぶしにはなった。
ベルは、迷惑そうに僕を見ていたけれど僕はベルを睨みつけて、ベルの視線を取り払った後ずっとラジオを聞いていた。

そうでもしなければ、思い出してしまう。
母さんの事、みんなの事。嫌だった事を思い出してしまう。
僕は逃げていた、母さんが居なくなったショックを。
母さんが消えてしまったショックを。
マトモに受け止められないで、毎日ぼうっとしているだけ。
僕は、その点ではベルよりも幼かった。 ベルは、きっと分かっている。
母さんが死んでしまった事を。


でも、僕にはまだ母さんが死んだ事を受け止められなかった。