偽り王子×イケメン嫌い女子



ーわぁぁぁ!!

体育館に入った瞬間、生徒達の声と熱気に包まれた。


「うわっすごっ」


「かんな、一番前行くよっ!」


人混みを前につばきに手を引かれながら最前列にでる。
そこには朝練をしているのであろうバスケ部一同の姿があった。



「………げぇっ」


あたしは思わず嗚咽をこぼす。
それもそうだ、なぜなら……


――『キャァァァァ!王子ぃぃ!』


――『瀬戸くぅぅん、がんばってぇ』


――『翔馬様ぁぁ!!』


この場の視線を奪っている張本人で、この学校で知らない者はいないとまでいわれているプリンス、

瀬戸翔馬(セトショウマ)がいたからだ。


イケメンが大大大嫌いなあたしにとっては迷惑な存在でしかない。

でも実力は本物らしく、有名プロバスケットボールチームから勧誘されているらしい。


そして瀬戸にも負けずに視線を集めているのがもう一人……


――『うぉぉ!見ろよ小日向さんだ』


――『やっぱかわいーなー』


――『つきあいてぇー!!』


そう今隣にいる、あたしの大親友だ。

小日向つばき(コヒナタツバキ)

この学校のマドンナだ。


「相変わらずモテモテだねーつばきは。」


「私は別に、たった一人だけにモテてたらそれで……」


つばきが顔を赤くしながらそう言った
つばきには中学から付き合っている彼氏がいる。