オオカミと少女


「ああ、やっとだ…」







イーサンは角を曲がり、パン屋を見つけた所でため息をついた。




その姿はボロボロで、目の下にはクマがある。




「…ナターシャに、謝らなくちゃいけない。2週間も来てなかったんだもんな…。」



イーサンは足も怪我をしてるようだった。



それは何かに叩かれたような傷で、赤黒く腫れ上がっている。



イーサンは足を引きずりながら店に近づくと扉に手をかけ、そこで立ち止まった。



中にはナターシャとレミット、それに1人知らない男がいる。



その男はこちらに背を向けているため顔は見えないが、ナターシャはどこか不安そうな表情でその男と話していた。




それは、その男を心から心配しているように見えた。




夕日が店の中に差し込み、昼前の様子しか見たことのないイーサンにとってそこは知らない店のようだった。





知らない店、知らない男



ナターシャの不安気な表情




イーサンは胸にモヤモヤしたものが現れたのを感じた。



「ナターシャ…」