「…あのありがとうございました」
あたしは頭を下げる。
「こちらこそ」
え?
男の子も頭を下げる。
「遅刻だったんだけど、人助けたからって免除されたんで…」
少し恥ずかしそうに笑う。
あれ?
可愛い笑顔。
「…名前、教えてください」
ちゃんとお礼しなきゃ。
あたしはスマホを取り出す。
「俺は、友田 隆(ともだ りゅう)。同じクラスなんだ」
少し照れたようにはにかむ。
……少し。
ほんの少し、ときめいてしまったのは秘密。
「あたし、延野 天使(えんの ゆかり)です」
「知ってる知ってる」
少し笑う友田くん。
「天使って書いてユカリだよね?じゃあ『テンちゃん』ね」
……て、テンちゃん?
「…あ、たしのこと?」
「うん。テンちゃん!俺だけのあだ名ね」
嬉しそうに微笑むから、逆らえない。
「友田くんありがとう」
友達、だよね?
「え?友田くん?リューていいから」
リュー?
あだ名?
「ね?テンちゃんと俺だけの呼び名ね」
不思議だ。
