「お願い! あたし平峯くんのこと気になってるんだ。だから応援してほしいの」
 彼女は上目遣いで瞳を潤ませながら手を合わせている。
 この表情をよく男子は鼻の下を伸ばして見ていた。彼女が言うことはなんでも叶えようとする。
 男子の前だけで高い声を出したり、甘えるような仕草をする彼女は、もしかしたら世に言う女子の大嫌いなぶりっ子なのかもしれない。それでも私はさして彼女に嫌悪感を抱いていなかった。だから私は笑顔を向けた。
「うん、いいよ。私に出来ることならなんでもするから」
軽い気持ちで頼み事を受けた。それは今思えば、あまり相談されることのない恋バナにやじ馬心が覗いていたからなのかもしれない。

だから私は思いもしなかったんだ。
この約束が今後、私を苦しめることになるなんて。

中学二年の春、私は嘘だらけの恋を始めた。