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「なぁなぁ。あれ、なんて鳥?」
「・・・」
「あっ!あれは?あの、ネコみたいなやつ!」
「・・・」
「うわっ。この木でっけぇー。こんな木、初めて見たかも」
「・・・」
「なぁなぁ。この木、なんて名前?」
「・・・」
「おーい!聞いてる?」
何も答えない私にしびれを切らしたのか、少し拗ねたような顔をして、私の顔を覗き込んだ。
「……桜」
彼から目をそらして、そっけなく答える。
「さくら、かぁ」
彼は、うっとりとしたような表情で、満開の桜を見上げていた。
「きれいだね」
そう言った彼は、さっき私を見つめたときと同じような、優しい笑顔で桜を見つめていた。
彼の笑顔に、目が引き寄せられる。
「ん?」
こっちを見た彼と、ばっちりと目が合った。
