「な、何言ってるんですか、先生。」
『あら?本気にしてない感じー?』
「当たり前です。」
先生の言葉に一喜一憂していたら、私の身が持たないことは、もう学習済み。
っていうか、先生の本音なんて、一度も聞かされたことがない気がするんだけど。
原稿が仕上がってルンルンな先生に背を向けて、キッチンに向かい、煮立っていた肉じゃがの火を止める。
「先生、出来上がりましたよ。」
『ありがとー。」
「では、私はこれで、失礼しますね。」
今日はギリギリ待ち合わせ時間に間に合いそうだ。
一週間ぶりに会えると思うと高鳴ってしまう胸の高鳴りを抑え込みつつ、リビングのソファに置いたままにしていた自分のカバンを手に取る。
『あら?今日は食べていかないの?』
「あ…はい、すみません。今、白ご飯は炊いてますから。あ、あと…冷蔵庫に買ってきていたプリンがあるので、どうぞ召し上がってください。」
そう言って、リビングを後にする。
玄関に続く廊下を歩いていくと、後ろから先生が付いてきた。

