ガチャッ――パタンっ
午後5時すぎ。
洗濯物を干し終えて、夕食の準備をしていると、仕事部屋の扉が開いた。
『あー…疲れた…。』
数時間、執筆で籠りっきりだった先生は、数時間前より覇気のない表情で、リビングにやってきた。
「先生っ、お疲れ様です。」
『ん、ありがとー。』
肉じゃがを煮込んでいた鍋に蓋をして、私はエプロン姿で先生の下に駆け寄った。
「原稿、出来上がりましたか?」
『うん、まぁね。はい、これっ』
差し出されたのは、白のUSBメモリー。
それを受け取った私は、大事に自分のカバンにしまった。
「ありがとうございます!きちんと編集社に届けますね。」
『頼んだよ。あ、あと…コレ。』
「……?」
先生に差し出されたのは、さっきもらったのと同タイプの黒のUSBメモリー。
今日は、月刊雑誌の青春がテーマの小説の締め切りだけだったと思うけど。

