打ち合わせ時刻まであと40分。
ただでさえ時間がない中、木下先生の担当の引継ぎも立て込んで大忙しだった。
「木下先生の今月のスケジュールはこちらです。」
私の代わりに木下先生の担当になった進藤さんに、木下先生用のスケジュール表を差し出す。
『ありがとぉー。あ、私も…コレ、工藤先生のスケジュールねぇ~。』
「あ、はい。ありがとうございます。」
バッチリとキラキラのネイルが施された白い手から、一枚のプリントを渡される。
プリントの内容を見てみると、今月のスケジュールはペラペラ。
「あの…、このスケジュール、原稿の期限しか書かれてないんですが――」
『ぁあ、工藤先生はね、あまり外に出ていきたがらない人だから、自分の作品がドラマ化とか映画化されてもパーティーには参加しないのよ。それに、あまり自分の仕事を他人に管理されたくないみたいだし。』
「あ…、そうなんですか…。」
噂で聞いたことはある。工藤先生は気難しい性格の人だってことは。
そのせいか、工藤先生の担当は長くは続かなくて、編集長が唯一、工藤先生の担当が長く続いたらしい。
その功績が認められて、編集長は今の地位を掴んだとか掴まなかったとか。
よく詳しいことは分からないけれど。
『まっ、頑張ってね~!』
「…はい。ありがとうございます。」
なんだかフワッとした引継ぎを終えて、私は10時から始まる資料作りに勤しんだ。

