『は?何言ってんだよ。いいから、早く先生の元に行けよ。』

「うっ……」

『先生が原稿書きあげるまで、お前も先生の家に泊まる心づもりで行け。』

「………え。」

『先生の身の回りの世話をしろ!それがお前の仕事だ!』


言いたいことだけ言った編集長は、もう私に用はないと言うようにこの場から去っていく。


「そんなぁー…。」


酷いです、編集長…。という力の入っていない私の声は、誰の耳にも届かなかったのだった。


気まずいのに。

あの日、あの時、先生にトキめく自分がいることに気付いていたから、行きたくないのに。

この一週間、行かなかったのに。


現実は、甘くなかった。

――彼の愛は、人生の中で一番甘いけど。