「っ、何す…っ」
ようやく唇が離された時には、私の息はキレギレで、酸素を体に取り込むのにいっぱいいっぱいでろくな言葉も紡げないのに、目の前にいる先生は何事もなかったかのように平然と私を見つめていた。
その目は、何かを企んでいるような熱さを孕んでいる。
『茉子が悪い。』
「っ…!?」
『誰がいけ好かない男と付き合ってるって?』
「ッ…いけ好かないって…!」
腰に回された腕は、ガッチリと私をホールドしていて、離す気は全くない。
彼を侮辱するような先生の口ぶりに、私は目を見開いた。
『うん、いけ好かないよね。好きな女のカレシなんか。』
「なっ……え?」
好きな……女?
先生の言葉を心の中で反芻してみても分からない。
先生……オネェ、だよね?
好きなのは…男の人、じゃなかった?
随分前に、テレビに出ていた男性アイドルグループを見て液晶画面に愛の言葉を投げかけていた先生を思い出して、私の記憶は間違ってないと確認する。
でも…それだと、さっきの先生の言葉は?
私の記憶と先生の言葉が噛み合っていなくて、私は混乱した。

