隼人 side
「ねぇ、どこに行くの?」
「ん〜、とりあえずすぐ着くよ」
不思議そうに聞いてくる彼女に対して
それしか言えなかった。
まぁ
あの住宅街の奥さんは
俺の姉さんだ
のひとことで済むのだけど。
何だか言いづらい。
ほら、もう着いてしまう...。
姉さんちの柵を開けた瞬間、
後ろで声がした。
「あれ、みなみく...じゃなかった
は、隼人くん ここ?」
「うん、あってるよ」
苦笑いで答える。
「え、でもここって...」
玄関のチャイムを鳴らして
応答を待つと勢い良くドアが開けられた。
ーどうしてみんなそんなに
いきなりドアを開けるんだ...
「誕生日おめでとう〜!
早かったのね!」
「うん、ありがとう。
ていうか、その力で
思いっきり開けたらドア壊れるよ?
後 愛 連れてきたから。」
「あら、失礼ね?
壊れないわよ、おバカさん。
本当にちゃんと連れてきた?
これで嘘だったら嫌よ、
私楽しみにしてたんですからね!
最近会ってないんだもの」
後ろを振り向くと
何がなんだか分からずに
混乱してる彼女。
ごめんね と言って
俺が話してる人が見えるよう
ドアを広めに開いた。
「愛ちゃん?!
本当に来てくれたのね!
良かった〜!」
いきなり きゃーきゃー言い出す
姉に失笑する。
「...あ、江梨子さん...こんばんは...?」
まだ頭がついて行ってない様子。
そりゃあそうだよなぁ。
「えーと、この人の
旧姓聞いたことある?」
「き、旧姓?ない、と思うけど...?」
「ふふふ、南 江梨子です☆」
...楽しんでるな、姉さん。
「うん、つまり 俺の姉...。
ごめん、黙ってて」
愛が固まる。
「...お、お姉さ、ん?」
「そう」
「え、うそ?!」
「あはは...うそじゃないんだよなぁ...」
「ま!とにかく入って?
もうすぐ仕度出来るから。」
ーーーーーーーーーー
席についた目の前のテーブルには
これでもかというほどに
たくさんの料理が並んでいる。
隣の彼女はというと、
まだ少しだけ整理が
ついてないみたいだった。
「じゃあ、いただきましょう?
たくさん食べてね☆」
「いただきます」
「い、いただきます」
そしてさっそく姉さんが話し出す。
「ねぇ愛ちゃん
ケーキ、どうだった??」
「あ、喜んでもらえ、ました...」
そのまましゅ〜っと音がするように
赤くなる 日比野さん。
「ん?姉さん知ってたの?」
「そりゃあ知ってるわよ〜!
デコレーションのコツとか
聞いてくれたのっ。
愛ちゃん相当器用だから
心配ないっていったんだけどね。
あ、ちなみにいうと愛ちゃんが
あんたを好...
「えっ!?だっ、だめですだめです!絶対 にっ!!」
「うふふ、大丈夫☆
言わない言わない〜☆」
隣で本気で焦ってる様子の
日比野さんと
にやにやしてる姉さん。
本当にかなり仲がいい雰囲気だ。
まぁ、そうだよなぁ。
もう5年くらいの付き合いだからな。
しばらくぼーっと
ふたりのやりとりを見ていると
それに気づいた姉さんが
次はいつも俺をからかうときの笑顔、
不敵な笑み で言ってきた。
「あっ、ごめんなさい、
妬いちゃった?」
「?!」
愛は驚いたようにこっちを見た。
「あはは、
妬いたっていったらどうするの?」
「ん〜、隼人もがんばんなさいって
いうかなぁ。」
「へぇー、ずいぶん適当だな。
ご忠告どうも。」
それだけ言って、
料理を口に入れる。
「素直じゃないんだから。
ねっ☆」
「な、何でふるんですかっ!」
『ただいま〜』
「あっ!太一さん!
おかえりなさい〜」
姉さんはがたっと立ち上がると
一目散に玄関へ向かう。
何やら途中で驚いたような
喜んだような声が
聞こえたけど、
しばらくして兄さんが
ダイニングに顔を出した。
何だかいつもより
一段とほわっとしている気が...。
「やぁ、2人ともこんばんは。
隼人くん誕生日おめでとう、
愛ちゃんは久しぶりだね。
今日はゆっくりしていって。
僕先に着替えてくるから。」
とても優しくて温和な人だ。
そういって兄さんのあとを
姉さんが荷物を持って上がっていった。
「江梨子さんと太一さん仲いいねぇ」
にこにこしながら隣で呟く愛。
「うん、姉さんと愛もね?」
と俺。
「...あ、うん!
それはもう長年の、というべきかな」
恥ずかしいそうに
嬉しそうに答えるもんだから、
本気で少し妬いてしまったじゃないか...
ちょっと困らせたくなる。
俺は彼女の手を引っ張り
軽くキスをした。
「な、なに、どうしたの...?」
途端に真っ赤になる彼女に
内心可愛いと思いつつ、
さらに近寄る。
「...ん〜、何だろう、お仕置き?」
「えっ、お、お仕置きって...
じゃなくって!
江梨子さん達いるからっ!」
予想通りの焦り具合。
「着替えてくるから、
あと3分くらいは大丈夫だよ?
それに、階段の足音でわかる」
「3分じゃん!
それに、ち、近いよ...」
「いや?」
「い、嫌なわけな...」
「あはは、良かった」
「...? いたっ」
そのままコツんとおでこを
当てて離れた。
これでちょっと満足。
と思っていた矢先、
今度は俺の方がくいっと引っ張られた。
「...?」
すると涙目でこっちを
見てきたかと思えば、
一瞬にしてその距離はなくなった。
ちゅっと頬に軟らかい感触。
何が起きたかわからなかった。
とりあえず彼女を見ると
相変わらず赤くなっている。
すると本当に小さな声で呟いた。
「...お返し。
あと、た、誕生日だから...。」
体温が上がっていく。
ー何なんだ...。
可愛い過ぎる。
そして、最後は結局こう負かされる。
2人っきりじゃなくてよかった...。
理性を保つのも簡単なことじゃない。
...でも、
17歳の誕生日
彼女とみんなに祝ってもらえて
すごくいい日になったと思った。
