隼人side



「ふぅ〜」


5時間目の休み時間 少し教室を出たら、
また通りかかった担任に使われた。


今日は多分少し返すのが遅くなった
夏休みの課題。


階段を上がって廊下に差し掛かったとき
少し離れた奥の方に女子生徒がいた。


長い栗色の髪を今日は
後ろでひとつに束ねている。
そして色白ですらっと細いその姿。

見間違えるはずもなかった。


でも何であんなところに?

誰かと話してる?


ちょっと角度を変えてみると
男子生徒と話してるみたいだった。


ー...めずらしいな。


ん?


「...翔?」


何やら楽しそうに笑ってる。


別に話すのは構わないけど
たまに翔が俺を探しに来た時は
2人で普通に話してるし。


でも今回は
わざわざ翔の教室まで行って...


日比野さんの方が
用事があったのか...


しばらくその場で
ぼーっとしていると
後ろから声がする。


「あれ、南くん、何してるの?」


今戻ってきたらしい彼女が
ふんわりと笑った。


手にはいつも閉まっている
携帯を握り締めている。


「いや、先生に頼まれてさ。
日比野さんは?」


「え、あ、ちょっと
お手洗いに行ってきたの」


隠す必要があるのか...。


「そっか。」


あんまり詮索したくないから、
何も言わないけど
携帯持ってるって事は
連絡先も交換したんだろう。


「あ、チャイムだ。
入ろう?あ、重くない?
大丈夫?」


気を使ってくれる
日比野さんにいつものように微笑む。


「大丈夫だよ。」


「そう?じゃあ授業頑張ろうね」




本当は気になってるけど。

うん、まぁ、大丈夫だろう...。


彼女がまたふわっと笑ったから
そう思うことにした。