隼人side
「ねぇ、南くん!
今日放課後暇?」
その一言から始まって今に至る。
「やっぱり、具合悪いし
迷惑なんじゃ...
まだ返事きてないんだろ?」
「何いまさら言ってるの〜?
もう下まで来ちゃったもん!
それに暇って言ったじゃない。」
そのまま入り口のオートロックも
難なく通り抜けた。
言った。
言ったけどさ...。
「会いたいでしょ?
心配でしょ?」
そりゃあそうだろう...
「愛ね、誰にも言わずに休んで
いつも1人で治そうとするから心配で。
こういう時は前まで私が行ってたけど
次から南くんがその番だからね?
邪魔になるとか考えなくて良し★
それにね...、愛ったら
熱でるとちょっと甘えん...
あ!4階だ!行こ!」
そして開いたドアの前に
差し出された訳だった。
びっくりしてる日比野さんは、
言っていたとおり
頬が赤く、
おでこにはシート。
目は熱を帯びていた。
なんの反応も出来ないまま
「ごゆっくり〜★」と
ドアを締められてしまい
玄関で2人で立たずむ。
「あ、えっと、
南くん来てくれてありがとう。
でもうつったら大変...」
「うつらないよ。
それより大丈夫?」
「うん、平気平気ー!」
そうふんわり笑ったけど、
相当きつそうに見える。
頬に手を当てると
まだ熱が高いのが分かった。
「...うそばっかり。
飲み物とか買ってきたから
横になろう。
わざわざ起き上がらせてごめんね。」
「うん...」
少しふらついてる日比野さんの
手を握ってそのまま
彼女の部屋に移動した。
ベッドに座らせると、
ぽ〜っとのぼせたように
俺を見ていた。
「どうした?大丈夫?」
「んーん、大丈夫。
何でもない」
嬉しそうに微笑んだあと
そのままころんっと横になった。
俺もベッドの横の床に座る。
「...さっきから
何かふわふわする」
「ん?」
「南くんが来てくれて嬉しいなぁって。
家は1人で少し寂しかったし
会いたいなぁって思ってたから。
よかった...。」
またにこっと笑ってそういった。
熱で浮かされてるのか
今日は随分ストレート。
それに赤く染まった頬に、
ゆるいTシャツの間から見える首元。
ーやばい...。
思わず逆方向に
目を背けてしまうほどに。
無防備すぎる...。
その時シャツを
くいくいっと引っ張られた。
反射的に振り向くと、
熱のせいか少し涙目になりながら
こっちを見ている。
「...何であっち向いてるの?」
「.........」
ーなんだ…?今日やっぱりいろいろと…
今度は目が逸らせない。
「あ、あのさ」
邪念を振り払うように
話題を変える。
「?」
「今朝のメッセージで
やっぱり休むって言ってたけど、
何がやっぱりだったの?」
あぁ と日比野さんが
思い出したように言った。
「昨日から調子悪くて
朝起きてから結構熱があるって
分かってたんだけど、
家でたんだよね。…それで
登校中にくらーってしてきて
もう無理って思ったから
やっぱり、 って所かなぁ…。」
「熱、何℃あった?
今は?」
「…んーと、朝は38.2℃で、
さっき測ったときは38.6℃?
でも病院行ったし大丈夫〜。」
確か前に低体温って言ってた。
それでその熱はかなりなんじゃ...
ーまったく、本当に...
「もう、危ないなぁ...
何でそこまでして行こうとしたの?」
「...学校に行けば、」
「うん?」
「...元気になると思ったから。
麻里もいるけど、
南くん、いるもん...。
あんまり話せなくても
同じところにいるだけでいい...。」
すると一瞬寂しそうな顔をした。
「それに...熱で1人苦手、なんだ。
でもおばあちゃん達はお店があるし
もう高校生だもん
いちいち言ってられないからね...。」
こんなにスラスラと
自分から本心を話すなんて
滅多にない。
そう言いながら目をつむる
彼女の手をそっと握る。
「...言ってくれたら
いつでも来るのに。」
熱っぽい瞳を見つめた。
触れている手は
今にも溶けてしまいそうなほど熱い。
「...ありがとう。」
ふわっとした笑顔。
俺の1番好きな表情。
それから何となく手を離せなくて
そのまま握ったままだった。
「ふふっ」
しばらくの沈黙を破ったのは
日比野さんの笑い声。
「南くん、好き。」
まさかの言葉に
全身が一気に
熱くなっていくのが分かった。
ー...だめだ。
早く寝てくれないか...
これ以上ははっきり言ってもたない。
俺はベッドサイドに顔を埋めた。
素直っていいかもしれない。
普段聞けないことも聞けるし。
でも彼女の看病には
かなりの理性がいることが分かった。
