愛 side
ーうわぁ〜…
私は今
暗い人混みの中
南くんに手を引いてもらってます。
初めて繋いだなぁ。
とか、
優しかったなぁ。
とか、
南くんの横顔
かっこいいなぁ。
とか考えてたらまた
ふわふわしてくる。
私どれだけ溺れてるんだろう…
こんな自分が恥ずかしくなってくる。
そんなことを考えていたら
いつのまにか人混みをすり抜けて、
少し広い空間に出ていた。
「すごい人だったな。
大丈夫だった?」
「あ!うん!大丈夫だったよ。
ありがとう。」
「そっか、よかった。
じゃあこっちが少ないから、
行ってみよう。」
そう微笑みかけられる。
きゅんと胸が鳴るのは
今日で何回目なんだろう…。
繋いだ手もそのまま握られていた。
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楽しい時間が過ぎるのは
あっという間で、
18:00を回っている。
「あ、もうすぐ閉館か…。
人混む前に出とこうか。」
「…うん」
ーもう、終わっちゃうんだ。
何だか心さみしい気がして、
返事が遅れてしまう。
「また次来たときは
今日見れなかったところを見よう
ショーとかさ」
「次?」
「うん、次。」
“次”を当たり前に考えてくれてる。
純粋に嬉しくて、
さっきの寂しさなんて
もうどこかに飛んでしまった。
「そっか、次かぁ
よかった」
「よかったって何か変なの」
そんな話をしていると
水族館のゲートを抜けたので
そのまま駅に向かう。
水族館と一緒になっている駅で、
すぐに着くから便利だなって思った。
「この線、人多いんだよなぁ」
南くんが一言そういうと、
ホームにアナウンスが流れる。
『まもなく2番線に電車が参ります』
やってきた電車は
思ったとおり人が多かったけど、
なんとか出入り口側に
乗ることができた。
ふぅっと一息つくと、
南くんがくすっと笑う。
それでさえ、
まだ慣れてないからドキッとするのに
人が多いせいですごく近かった。
緊張
のひと言。
だいぶ心も落ち着いてきた頃には、
20分近くが過ぎていた。
人も減ってきて余裕が出ている。
時間的には
あと半分というところかな~。
ふと南くんを見上げると、
遠くというか奥を見ていた。
私の後ろの方。
さっきからだけど、
話している最中から時折
そこを見ていた気がする。
ー 何があるのかな?
その目線を追って振り返ってみると、
そこで目に入った人を見て
心臓が飛び跳ねた。
えっ…
なんで…
だって今日は木曜日。
明日のはずじゃ…。
「あ、やっぱり知り合い?」
横から声が掛かる。
「え、な、何で?」
「いや、さっきからすごく
日比野さんのこと見てるなぁって
あの男の子?っていうか高校生。」
…私達に気付いてるの?
「……」
「日比野さん?大丈夫?」
「…あ、うん、ごめん、
あの、悪いんだけど
一旦 降りて次の電車で…」
「うん、いいよ。
あと2、3分で着くから。
もう少し。」
「…ありがとう」
思い出したくないのに
次から次へと過去が頭に出てくる。
ーはやく、はやく降りたい…。
顔を俯けた時に
軽く肩をひきよせられた。
そして優しくぽんぽんと叩かれる。
それだけで
ホッとして、安心して。
体の緊張が少しずつ溶けていった。
