そんなこんなで
誘ってみた訳だった。
すごく喜んでくれた。
ちらっと隣を見ると
楽しそうにスマートフォンで
写真撮影中。
やっぱり好きなんだろう。
そのスマートフォンには
キラキラと輝く月のキーホルダーが
つけられている。
この前 俺がお土産として
買ってきたもの。
素直に嬉しかったけど、
引っかかることが1つあった。
最近ずっと何か言いたげだったんだ。
話そうとしては、口を噤む。
今はそんな様子はないけど、
気になってしまう。
「南くん?」
「…あ、うん、どうした?」
日比野さんは
きょとんとしたまま
俺の顔をじっと見つめている。
「ぼーっとしてたから、
ちょっと呼んでみたの。
大丈夫?」
「あはは、俺のくせだから
全然心配ないよ。
それより次いこうか?」
「うん!」
ふんわりとした笑顔を向けられ、
無意識に胸を押さえたと同時に
顔を背ける。
俺の目に写ったのは
人の海。
俺はかろうじて
人混みを見渡せるけど、
日比野さんだと
多分何も見えないと思う。
「日比野さん」
手を差し出した。
「えっ?」
顔を赤らめて戸惑い始めた。
きっと、今頭の中で
整理しているんだろう。
「はぐれたら嫌だし、
せっかくだから、ね?」
そのままそっと手を握る。
すると、無言のまま頷いて
きゅっと握り返してきた。
可愛い。
「よし、じゃあ離さないでね
あっち行くから」
そのまま彼女の手を握って
次の場所に歩き出した。
