海の花公園 -2人の場所-

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「はい、よかったらどうぞ」


そう言って用意しておいた
クッキーと飲み物を出す。


「ありがとう~!
ていうか、愛
何かいい事でもあったの??」


「え?」


「いや、何だかいつもより
にこにこしてるっていうか
穏やかというか!
そんな感じがして!」


そんなに私ふわふわしてるのかな。


でも本当のところは
今でも少しドキドキしてる。


昨日はそれどころじゃなくて
麻里に伝えていなかったから
ちょうどいいかな。

佐伯くんに聞かれても
問題ないからね。




「あ、あのね、実は...

付き合うことになったの...」




その瞬間、
麻里の動きが止まる。


「麻里?」


すると、すっと立ち上がって
私の所まで来ると
思い切り抱きついてきた。


「よかったね!本当によかった!
これでわたしも安心だよっ!
おめでとう!」


「ははは、日比野おめでとう。」


「ありがとう...。」


少し恥ずかしいけど、
こんなに祝ってもらえて
幸せ者だな...。


「あ、それでだけどさ、」


「ん?」


「金曜からだから4日後か
1 週間くらい
千晶 帰ってくるみたいだぞ。
今 日比野に彼氏がいるなら
いいかと思ったけど
一応教えとくよ。」


「え...千晶が?」



ー『...は?何今更...
最低だろ...
もうどうでもいいわ、
愛なんか...』


前に言われた言葉が頭をよぎる。


その名前を聞いて
拒否感が出ているのがすぐわかった。


千晶 というのは
小学校から一緒の幼馴染みで
私の元彼のこと。


中学の時に告白されて
周りより落ち着いてて
仲がよかったから付き合ったけど、
付き合ってみたら違ったんだ。


メールはまめに
返さなきゃいけなかったし、
よく怒るようになったし、
何より私には少し重かったのかな。

前はそんなことなかったのに。


おまけに、付き合って半年過ぎに
私の好きは 友達としてで、
恋愛の好きではなかった事に
気づいてしまった。


さんざん悩んで、
お互いのためにもと思って
別れ話をしたんだけど、
「何で?」の一点張り。


これ以上傷つけることは
避けたかったから
あまり言いたくなかったけど、
正直に理由を打ち明けたの。


その時に返してきた返事が
さっき出てきた言葉だった。


今は少し遠い所の高校に通っている。


「え~、千晶くん?
てか何で悠ちゃん知ってんの?」


「いや、中学の時の部活のグループで
この前そう言ってるの見たんだよ。
日比野気付いてなかっただろうけど
最後までかなり引きずってたからな。
まぁ、あいつだから
何もないと思うけど。」


「悠ちゃん達に比べれば、
すっごくおとなしかったもんねぇ?」


「麻里も暴れまくってただろ?」


「...あの、」


2人が私に注目する。


「...私、千晶の事気づいてたの。
よく見られてたし、
メールで 遊ぼうとかより戻そうとか
多かったし...。
ちゃんと断ってたんだけどね?」


「え?そうなの?」


本当に驚いているみたい。

向かいでは佐伯くんが
黙って私の話を聞いている。


「そう...。
後、何回か帰りに待ち伏せ、みたいな
感じで『なんで?』って
問い詰めてきたり...

帰り道と時間変えたりしてたんだけど...
あと近所の奥さんに相談したりして。」


そう、なかなか話を終えてくれなくて
どうしようかと困ってたとき
江梨子さんが
たまたま通りかかって
助けてくれたこともあった。


「 は?!もうストーカーだろ。

それにしてもあいつ
そんな事してたのか...。
全然 しそうにないのに。」


「だよね...
びっくりした」


その時、
がしっと麻里に肩を掴まれた。


「ちょっと愛?
わたし知らなかったよ?
そんなに危ない目にあってるのに...
どうして言ってくれなかったの~っ!!」


グラグラと揺すられる。


ーあ、この表情は...


横目で佐伯くんを見ると
どういう状況か
把握していたようで
『がんばれ』と少し笑いながら
口パクで伝えてきた。


「あはは、ま、麻里、落ち着いてよ。
だって受験シーズンだったし...。
それにほら、何もされてないよ!」


「だってじゃないよう!!
くそ~、こうなったら
千晶くん、とっ捕まえて
文句言ってやる!!」


ーえ?!


「おいおい、やめとけ
困るのは日比野だぞ。」


ピタッと麻里の動きが止まる。
そしてすとんと隣に座った。


「そっか~、そうだった~」


「麻里ありがとうね」


「まぁ、とりあえず俺らも注意しとくよ。
何かあったら麻里に伝えさせるから。
日比野はあんまり1人で
うろつかない方がいいかもな。
家近いだろ?」


「う、うん。
確かここから15分くらいかな。」


「近~い...
私も助けるけど、
南くんにもちょっと言ってみたら?
何かあった時 安心じゃない?」


「それが1番だろうな。
それに日比野1人暮らしだし。」


南くんに...。


「そ、そうだね。
言ってみようかな...。」


「よし、決まり!
何か真剣な話したら
お腹すいたねぇ~
もうそろそろお昼だし、
駅前のドーナツ食べに行こっ!
悠ちゃんのおごりで~」


にやっと麻里が微笑んだ。


「...別にいいけど、
そうとなれば早く行かないと
混むぞ~」



「わーい!愛 行こ!」



「あ!うん!
バッグ取ってくる!」


隣にある私の部屋に入って
小さめのかごバッグを取る。


ふと机に置いてある
ラミネートされた
四葉のクローバーに目がいった。


何だかホッとする。



ー...まぁ、何とかなるか!



「愛ー!」



「はーい!」



少し気持ちが軽くなった私は、
足早に玄関に向かった。