愛side
「ただいまー」
玄関のチェーンが
掛かっているのを確認してから
靴を脱いでリビングに行く。
制服のネクタイを緩めながら
そのまま力が抜けたように
ソファーに座った。
テレビの前のデジタル時計には
7/29 18:42 と表示されている。
今日は昼前にお母さんの兄にあたる
おじさんが迎えに来てくれて
車で1時間ほどかかる
おばあちゃんの家まで移動してから、
お墓参りに行ってきたところだった。
その後 おじいちゃんが
料亭でご馳走を
用意してくれてて、
いろいろな話をして...
すごくホッとしたというか
何と言うか...
それより、
おじいちゃんもおばあちゃんも
元気そうでよかった。
でも、1人になると
どっと疲れが出る。
帰りは料亭跡継ぎのおじさんが
お店に出ないといけなくて
電車で帰ってきたから、
そのせいもあるかなぁ。
ゴロンとそのまま横になった。
目に入ったのは
笑顔のお母さんの写真。
その前には今日
出かける前に買ってきた
小さなひまわりが1輪飾られている。
お母さんの好きだった花なんだ。
お墓参りの後は
何だか心が空っぽになる。
そのままボーっとしていたら、
いつの間にか8時になっていた。
あ、そういえば今日 花火大会だった...
南くん、今頃帰ってきてる途中かな...
ー逢いたい
逢って話がしたい
いや、ただ同じ場所にいるだけでいい
それだけで今は満たされる気がした。
でも、明日にならないと無理か...
それにこんな抜け殻な
私を見られたくない。
「よいしょ」
重い体を起こして
クローゼットへと向かう。
ーせめて気分転換に花火を見に行こう。
うすい水色の切り替えトップスに
白のショートパンツ。
そしてネイビーの
ウェッジソールを履いて
家を出た。
