愛side



夏休みが始まって
1週間がたった。


私は今、
麻里といっしょに
近くのアウトレットに来ている。


それにしても、
すごく人が多い。


まぁ夏休みだしなぁ...



「そろそろお昼たべようか!
愛 パスタ好きだよね?
美味しいところ知ってるから
そこ行こうよ~!」


「そうだね!
時間もちょうどいいし。」



パスタ屋さんに入ると
まだ空いていたらしくて
すぐに席に案内された。


疲れてないけど
お互いにふぅっと息を吐く。


「後で何買おうかなぁ~!
愛は何買うの?」


「ん~、私 可愛いバレッタが
欲しいんだよね~
あと洋服もいいなって思ってる!」


「あ!わたしもお洋服欲しい!」


麻里がそういった時
向かいの席に4人組の男の人達が座った。


こちらをちらちら見てきたから
下を向くと、
話し声が聞こえてくる。


「なぁ、あの子みろよ」


「うわ、かわいー
俺タイプー」


正直こういう事を言われるのは
好きじゃなかった。


ーなんか、居づらいな...



聞きたくなくても
話が耳に入ってくる。


その時
麻里が店員さんを呼んだ。


「あの、場所移動したいんですけど...」


「かしこまりました。
こちらへどうぞ。」


感じのいい店員さんで
すぐに笑顔で応じてくれた。


内心すごくほっとする。



「麻里、ありがとう」


「え~気にしないでよ!
わたしもこっちの方がいいし!
それに最後に睨みつけてきたから
もう大丈夫!」


自信満々にそういった麻里に
思わず笑ってしまう。


麻里の睨みつけというのは
誰でも怯んでしまうほどの
威力がある事を
中学の時から知っていた。


麻里の彼氏の佐伯くんでさえ
睨まれたくないと言ってたほど。


その可愛い外見の
どこからそんな威力が出てくるのか
不思議に思ってしまう。


「ねぇ、南くんと付き合わないの?」


「へ?!」


予想外の言葉が飛んできて
手にとったコップを落としそうだった。


ー危なかったぁ...
それにしてもつきあうって...


夏休みも、
毎日ではないけど
いつもの時間帯に公園で話をした。

ちなみに今日から
南くんは家族と旅行に出掛けていて
4日間いない。


「いやぁ、
そっちの方が愛にとっても
いいんじゃないかなぁって~。
無駄に男もよってこないし、
南くんなら安心だし!
内心どうなのっ?」


「うーん...
片思いだから、そういうの
あんまり考えてなかったかも」


「え?
わたしは南くんも
まんざらではないと思うけどなぁ...
告ったらOKくれるよ、きっと。」


「えっいやいや!それはないよ!
それに...
やっぱりお互い好きじゃないと」


こんな事言える立場ではないけど
あの時のような関係になるのは避けたい。


「あ~、そうだった、
もうすっかり忘れてたよ~
じゃあ南くんをメロメロに
しないとね☆
あ!花火大会誘えば!」


「花火大会?」


「うん!花火大会!
今年は何周年記念で
たくさん上がるって!」


「そうなの!
それは行きたいかも!
何日?」


「えーっと、日曜だから、
たしか29日だよ!」


...29日。


「8月じゃないよね?」


「いや、7月!
あ、そっか...」


麻里が突然悲しそうな顔をする。


そう、7月29日
私のお母さんの命日だった。


「うん、おじいちゃん達と
お墓参り行かないと!
そうしたら来年いこうかな!
曜日固定なら日付ずれると思うし!」


「そっか...
わたし林檎飴買ってくるから!!
絶対!!」


「あはは、楽しみにしとくね!


あと...」


「ん?どうした?」



「いつもありがとう。」




その後
私の言葉を聞いた麻里は
忘れられないほどの
嬉しそうな笑顔を見せてくれた。