海の花公園 -2人の場所-




隼人side



今日は朝からクラスは賑やかだ。


それもそのはず。


黒板には
「夏休みまであと1日」
というカウントダウンがかかれている。


1学期は本当にあっという間だった。


特に何かしてたわけじゃない。

学校に通って、
遅刻を避けるために
途中から少し時間を早くして...
翔と昼を食べて、下校して。


それから...



「あれ、おーい南くん?」


「...?」


横を見ると、日比野さんが
鞄を机においてこちらを見ていた。


「...あ、おはよ。」


「やっと気づいた。
どうしたの?」

少し笑いながらそう問いかけてくる。


なるほど、ぼーっとしてたんだ。


「いや、考え事してた、たぶん」


「そっか!」


彼女の隣の席になって、
2ヶ月と少し。


夏休みが終わったら
席替えがあるはずだから、
ほぼ最後ということだ。


ーこのままでいいのに


何となく居心地が良かった。
1番後ろだし、それに窓側。

右を向けば、
俺にしては珍しい
この数ヶ月で仲を詰めた子が
ふわりと笑う。



「...今日はまとめてるんだね。」


「え?」


「髪」


「あっ、うん!
外は暑かったからね!」


耳下あたりで1つにしている
長い髪の先をつまんで
答えた彼女はどこか嬉しそうにみえた。


「なるほど、確かに。
でも似合ってるよ」


「えっ」


予想外、というように
かぁっと頬を赤く染めている。


それをどうにか手で隠そうとする姿に
不覚にも動揺してしまった。


こっちこそ予想外で言葉がでてこない。


本当に予想外...。


しばらくの沈黙の後に
ふぅーと息を吐いた
日比野さんが口を開いた。


「あ、ありがとう...。」


さっきの格好のまま
ちらっと俺を見る。





ー...まいった。


思わず頭を抱えた。


そんな自分に苦笑する。


たぶん最初から
そういう風にできてるんだ。



「よし、あと10分で式が
始まるからホールに移動しろー」


先生の声が響くと同時に
一斉に生徒が立ち上がる。


「隼人ー、いくぞー」


「おー」


しばらくぼーっとしていたのか
周りにはもう人が少なかった。


友達の 村田 正弥 と 森沢 陸 が
席まで歩いてくる。



ーさてと...


そう立ち上がった時、
教室を出かかった
日比野さんが見えた。



隣で陸が喋り出す。


「お!今日結んでるじゃん!
かわいいなぁ~ !
正弥気づいてた?」


「あぁ、朝タイミング一緒だったから」


うーん...。

多分こういうのが苦手何だろう。


「でもお前ら2人見ると
悔しいけど何か納得させられるよな。」


「あーー!
いいなぁ隼人~!」


「陸 うるさっ 声下げろよ。」


正弥が言ったその時
くるっと噂の彼女が振り返った。


ーあ、目が合っ...


「おおー!今俺目が合った!!」


「実は俺かもよ?」


「いやいや、おーれ!!」


「......」



ーはぁ


呆れなのか何だか分からない
ため息が出る。


思ってる事は一緒か。


目が合ったのはお前たちじゃなくて...
と心のどこかで思っている
俺も自意識過剰なんだな。



そんな事を考えていたら
いつの間にか
校舎3階のホールについていた。


けど、生徒で入口は詰まってるから
しばらくは待ってないと…。


無心になりかけた瞬間
正弥にぐいっと制服を引っ張られる。


そのまま横の
少し離れた人が少ない所に
連れていかれた。


「...びっくりしたー
何、どうした 正弥 」


「気づいたらまた周り
女子だらけだったから」


「ちくしょう、隼人ばっかり~!
俺はそのままでも
よかったけど~...」


さっきまでいた場所を見ると
確かに女子が増えていた。


「あ~...、何か気使わせてごめん」


「はは、いいってことよ」


「しっかしよ~!
本当に隼人羨ましいな!
でも隼人完璧だもんな
俺も来ないかな〜モテ期」


「こねーよ」


横でいつものやり取りを
始めた2人をよそに周りを見ると
同じように離れたところにいる
2人を見つけた。


窓の外を見ながら
楽しそうに話をしている
小柄な女の子。

そして
その横に寄りかかりながら
穏やかに頷いている
スラッとした女の子。


多分 俺たちと同じ意味合いで
あんな所にいるんだろう。


その時 視線が
大きな瞳とぶつかった。


一瞬びっくりしていたものの
すぐにいつもの
柔らかい笑みが送られてくる。


俺も同じように返すと、
春乃さんから名前を呼ばれたのか
すぐに俺から視線を離してしまった。


ー......


ーあぁやっぱり。


ここ2ヶ月彼女と話をしてきて
自分の変化に
気づいていない訳ではなかった。



なんか、


「…あつい」



「は?ここホールからの冷気で
涼しいじゃん。
そう言えば俺さっき教室で
クーラーの真下でさー!
すごい寒かったぞ!!」


「隼人って暑がり?」


すぐさまツッコまれた。


「…ん~、そうかも。」




「あ!空いてきた!
行こうぜ!!」


陸に続いて
ホールに入る。



中は予想通り
冷房がきいていたけど
どこかでなかなか
抜けない熱が残っていた。