海の花公園 -2人の場所-




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着いたのは私が住んでいる
マンションの手前にある住宅街。

詳しく言うと
その住宅街の大通りに面する一軒。


江梨子さんと仲良くなれたのは、
あの道が通学路だったおかげだった。


中に入り手を洗ったら
さっそく夕飯の支度に取り掛かる。


何やかんや言ってもう
6時半頃だからね。


「愛ちゃん、
ベーコン切ってもらえる?」


「はーい!
じゃあここお借りします。」


私は貸してもらったエプロンの紐を
後ろできゅっとリボン結びにしながら
江梨子さんの横に立った。


私も一人暮らしで料理はするので
こうして一緒にご飯を作っていると
すごく勉強になる。


気になった料理のレシピは
メモを取らせてもらったり、
よかったら と言ってわざわざ
持ってきてくれたり...


本当にお世話になりっぱなしで
申し訳ないなぁ。


調理はてきぱきと進められ、
すぐにスパゲティーをメインにした
おいしそうな料理が テーブルに並んだ。


「やっぱり愛ちゃんがいると
スムーズに終わるわね〜!
助かったわ、ありがとう。」


「いえいえ、とんでもないです!
こちらこそ いつも
すみません、助かります。」


「あらあら気にしないで、私も楽しいし。
ずっといてくれてもいいわよ」


最後にいたずらっぽく笑って
そのままイスに腰をおろした。


「あはは、もう江梨子さんたら〜。
ありがとうございます。」


私も同じように向かい側に座る。


いただきますと手を合わせて
目の前のサラダが入ったお皿を
手にとった時、

「そ れ で 」

江梨子さんが
目をキラキラさせて言った。


「愛ちゃん"こい"してるの〜?」


こい。


恋?


この2文字で無意識に
頭をよぎったのは
私に四葉のクローバーをくれた人。


同時にぎゅっと鳴る胸に
びっくりする。


「恋...」


改めて考えてみると
顔がカアッと赤くなるのが
自分でもわかった。



質問した江梨子さんは
私の反応を見て、
きゃーっと頬に手を当てて
すごく楽しそうにしていた。


「やっぱりそうなのね〜!
私もう一度してみたかったのよ!
こ い ば な !」



...私恋してるのかな。



昔、麻里に確認のつもりで
聞いてみたことがあった。


「好きになるとね!
胸がきゅーってなって
苦しくなって、
本当にドキドキするんだよ!」


昔と言っても中学2年の時。
その時は麻里の言葉を
聞いた途端罪悪感が
湧いたのを覚えてる。



いま私にあるのは、
何となく消えない
締め付けられたような胸の違和感。


いや、席隣になってから
本当に1週間くらいしか経ってないし、

あと昨日と今日の放課後
ちょっと?話しただけ...


そんな短い時間で...


「あら、どうしたの?」


1人で悩み始めた私に
江梨子さんが声をかけた。


「あの...」


「うん?」


そういって
優しく微笑んでくれる。


「あの...、そ、その人の事になると
この辺が苦しくなるんですけど
それって...。」


遠慮がちに
胸の左の方を押さえて
聞いてみた。


「好きなんじゃないかしら、
その彼のこと。」


好き...。


...私、恋してるの?


ぽんと浮かんだ
彼の笑顔で
さっきの熱がまた吹き上がってきた。


「いや、でもまだ
話し初めてほんの1週間しか...!」


「あら、時間なんて関係ないわよ?
私は主人に一目惚れだったわ☆」



うっ、


私の顔は今真っ赤なりんごに
なってるんだろうなぁ
と思いながら頭を抱える。


でもどこかでホッとした自分がいた。


「で、で!
どんな人なの〜!」


興味津々の江梨子さん。
何だかイキイキしてる気がした。


その質問に
えっと って考えながら答えてみる。


「...背が高くて、スラッとしてて、
たまにからかってくるけど
それでも優しくて...
それと...」


「?」


「ツボがよく分からない、かな」


あははって笑いながら言ってみる。


その時、江梨子さんが ん?と
首を傾けた。


「あ、変な意味じゃないですよ!!
普段はクールっていうか控えめ?で...
でも意外と笑ってくれるというか...」


もう自分何言ってるんだか
と手で顔を仰ぐ。


前を見ると
江梨子さんが首を傾けたまま。


「あ、あの江梨子さん?」


「あらっ!私ったらごめんなさい!
今時そんな高校生
いるんだなぁって思って!」


どこか慌てたように見えるのは
気のせいかな?


そんな疑問をかき消すように
質問が飛んでくる。


「ねぇねぇ、その子
何くんっていうの?
気になる~」


「な、名前ですか...!」


まぁ、江梨子さんだからいいかな。


ちょっと緊張するけど...。


「み、南くんっていう
同じクラスの...」



多分言わせたかっただけみたい。


そう恥ずかしそうに言った私をみて
はぁ~ と顔に手を当て
嬉し楽しそうにした。


わかりやすく言えば
周りにお花が飛んでる感じかな。


その後、うんうんと頷きながら
いいわねぇ、青春って
懐かしいなぁ~
と何故か照れながら呟いている。


「その子も愛ちゃんから
好きになってもらえて幸せね。」


「そ、そんなことないですよ!
私なんて何もないし...」


「あら、それこそ
そんなことないわよ?」


江梨子さんのツッコミに
思わず笑ってしまう。


「ねぇ、質問攻めで悪いけど
南くんをいいなぁ~って思うのは
どんなところなの?」


ごめんなさい、こういう話楽しくて
と謝りながら言ってくる
江梨子さんに、
全然そんなことないと首を振る。


「...笑顔が素敵なところ、かな。
何だか落ち着きます。」


そっかぁと目の前のマグカップを
手で包み込んでいった。


「うふふ、うまくいくといいわね
応援してるわ
いつでも相談のるからね?」


ふんわりと優しく微笑んで
そう言ってくれた事が嬉しかった。


「ありがとうございます。
心強いです。」





“恋”


何か不思議と
自分がすごく女の子になった気分。


これが、好きっていうことなんだね。


まだふわふわと落ち着かないけど
この新鮮な気持ちを
大切にしたいと思った。