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細い小道を
少しだけ前かがみになりながら
ゆっくり進んでいく。
ずっと前は走って通れたのになぁ
なんて思いながら、
ようやく広い場所に出た。
正面に広がる海に、
吹き抜ける風が心地いい。
視線を落とすと、ベンチの向こうで
ロングヘアの女の子が
しゃがんでいた。
こっちに背を向けているから
表情は見えない。
まさか泣いてるんじゃないかと思い
駆け寄ろうとしたとき、
その子がくるっと振り返った。
頬をほんのり赤く染めて
びっくりしたように呟く。
「あ…、南くん」
どうやら泣いてはいなかったみたいだ。
俺はふうーっと息を吐きながら
日比野さんの隣にしゃがみこむ。
「…だ、大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫大丈夫。
それより何してるの?」
「四葉探しだよ。」
柔らかく笑った彼女が
視線を下に落としたので
俺もそれにならう。
「この前はももちゃんが
見つけてくれたんだけど
今日はいないみたいで…。」
“ももちゃん”というのは
いつもここにいる白猫のことだろう。
確かに今日は見渡しても姿がない。
たぶん何処か見えないところで
寝ているだけだと思うけど。
「なるほど、そういうことか。
それで見つかった?」
「それがまだなの~。
私もさっき来たばっかりで。」
残念そうに笑った彼女は
再び視線を下に落とした。
「簡単に見つからないからこそ、
もらえる幸せって大きいと思うから...
頑張って見つけたいなって。」
「...」
何て真っ直ぐなんだろう。
言葉が出ないまま
端麗なその横顔に見入ってしまう。
さすがに視線に気付いたのか、
ふと目が合った。
色素の薄い大きな瞳に
吸い込まれそうになる。
何だか気恥ずかしくなったので、
目を逸らし、
意識を足元に集中させた。
「「 ...... 」」
お互いひたすら
クローバーを見続ける。
四葉探し何ていつぶりだろう
何て思いながら、
探し続けること約5分ほど。
「あ...」
声を出したのは俺だった。
「南くん見つかった?」
ここで間違えたとは
いいたくないから、
ちゃんと確認する。
葉は...
4枚、ある。
「うん、あった。」
軽く引っ張ったつもりだったけど
根っこから抜いてしまった。
「あれ?」
日比野さんが目を丸くして
首を傾げる。
ーん?
手にとったクローバーをみると
元の方から
小さめの四葉がもう1本伸びていた。
「2本、だ...。」
「...2本、だね。」
奇跡。
まさかこんなに早く2本目が
見つかるなんて。
「あはは、すごいね、
びっくりしたよ~!」
彼女が隣で楽しそうに笑ったので、
俺もつられて笑ってしまう。
「本当、すごいな。」
「南くん凄くいいことありそうだね!」
「...うん、そうかも。」
そう言いながら
2本のうちの1本をとり、
日比野さんに差し出す。
「はい、どうぞ。」
「...え?くれるの?」
「うん。
2本あるし、ちょうどいいでしょ?」
おすそわけ と言いながら
きょとんとした彼女の手を取り
四葉を渡した。
「...ありがとう。
大事にするね。」
頬を少し赤らめてふわりと微笑む。
まさに花が咲いたようだった。
風がそよそよと吹き抜け、
目の前に広がる海は
静かに音を立てながら
少しずつ満ちていく。
ーーこの時間が続いたらいいのに。
知らず知らずに
そんなことを思っていた。
