隼人side



午後4時半


目の前には壁棚にぎっしりに
詰まっている大量の本。


しんとした店内には、
ページをめくる摩擦音が響く。


そう俺は今 翔の付き添いで
学校から少し離れた所にある
小さな本屋に来ていた。


漫画がどうとか言ってた気がするが、
熱心に聞いてたわけじゃないので
実のところよく分かってない。


ぼーっとその本の背表紙を
眺めていると、
翔がにんまりして歩いてきた。


「いや~買えた買えた
隼人、ありがとうな!」


「おかえり。
何買ったの?」


「は!お前話聞いてなかったのかよ?!
俺すっごい語ってたのに」


ぎょっとした顔で翔はそういった。


もう少し落ち着けば
かなりモテるだろうに…
と毎回ながら思ってしまうが
胸のうちにしまっておく。


世に言う イケメン というやつだ。


俺の思考を無視して
まだその顔を保ち続けている
目の前のイケメン(?)を見て
つい笑ってしまう。


「はいはい、ごめんごめん。」


「まぁ、お前のそういうとこ
今に始まった訳じゃないしな。
俺いいと思うぞ、
そのボケてる感じ。」


ボケてるって…


「ははは、もう何とでも言えよ」



気が置けない仲にある翔とは
特に目立つ話もせずに
だらだら帰る。

毎日こんな感じだ。



「あ、今日うちくる?
ハンバーグだぞ、たぶん」


「え?」


気づけばもう分かれ道まで来ていた。

あ〜、と考えながら言う。


「そうだな~…
今日は遠慮しとくよ。」


「ほぉ、そっかそっか
まぁいつでも来いよな!」


「うん。悪いな、気使わせて。」


そういうと、
翔はいつもの笑顔で
右手の親指を立てて言った。


「そんなん当たり前っつーの!
じゃ、また明日な」


俺もまた明日と手を上げる。


一人になって空を見上げると
沈みかけてる太陽が
綺麗なグラデーションを作り出していた。

何て幻想的なのだろう。



「…いるかな」



俺は ある場所 を目指して
歩き始めた。