隼人side



「ふぅ~」


風呂から上がり、
そのままベッドに倒れ込んだ。


壁にかかっているシンプルな時計は、
20:46 という数字を点滅させながら
一人でに針を動かしている。


今日は課題もないし、
これといってする事がない。


「…。」


そのまま寝転んでいると、
頭によぎるのは
ほんの3時間前の事。


あの後、彼女が落ち着くまで
時間はかからなかった。

たぶん10分もしないくらい。

目を真っ赤にしながらも
ありがとう と微笑んだその顔は
スッキリした様に見えた。


おだやかな雰囲気の中に
どこか凛とした強さを持っている
と 以前から感じていたけど、
こういう事だったのかなと思う。


彼女が抱えていたものは
俺にとっては
図りしれないほど重かった。


…大丈夫かな


そんなことを考えていたとき、
耳元で ピコン と音が鳴った。

スマートフォンのメッセージ受信音だ。

手で探り当てて、画面を見る。


メッセージ 1件 : 日比野 愛


一瞬 驚いたが、
すぐに そういえば と納得した。


別れ際に、
俺が連絡先を交換しようと言ったんだ。

いつでも頼れる様に、
助けられる様にと。


そのままアプリを開く。


『こんばんは、日比野です。
今日は話聞いてくれてありがとう!
遅くまで付き合わせてごめんね 汗 』


彼女らしい簡素な文章だった。

俺も指をすべらせて返信をする。


『いえいえ、それならよかった。
あんまり無理しないようにね。
今はどう?大丈夫?』


『うん、大丈夫だよ!
スッキリしました!
ありがとう(^-^)』


その文をみて無意識にタップしていた
右側の〝あるマーク〟


いきなり画面が切り替わり
それに気付く。


「えっと…」

思わず声が出た。


画面には
応答待ち の文字。


どうしたものかなー。

まぁ、ここで切るのも変だし
と思い、応答を待つことにする。


『…も、もしもし?』


その数秒後、
控えめな声が耳元で聞こえた。


「あ、日比野さん?
いきなりごめんね。」


『え!あ、いや、大丈夫!』


「あはは、何焦ってるの?」


『あ、焦ってなんかないよ!
ただ…』


「ただ なに?」


そういって黙り込んだから、
からかってみる。


『~っ!ちょっと緊張してるだけ!』


「あはは、なるほどなるほど。」


む~っとか何か言っている彼女が
可笑しかった。

そこで本題に入るのを
忘れてたのに気づき切り出す。

「あ、今日は何かごめんね。
思い出させちゃったかななんて
少し気になってさ。」


『え!全然そんなことないよ!
むしろ聞いてもらえて
よかったというか、
何ていうか嬉しかった。』


少し照れ気味に言う彼女に動揺する。


「そっか…
いつでも連絡していいから。」


『うん、ありがとう!
…ねぇ南くん?』


「ん?」


『…またあの公園に来る?』


心配するかの様な小さい声に
思わず笑が漏れた。


「…うん、行くよ。夕方にね。」


『そっか~!
よかった~!』


電話越しに
嬉しそうに笑う彼女が
俺の頭に浮かんだ。