「もういいよね。俺ここだから」

駅が目の前に見えるスーパーまで来ると、透夜はそう言った。春はコクコクと何度も頷いた。

「助かったよ~ほんと、神様だね!救世主だね!」

透夜の何も持っていない方の手を両手で握って、何度も何度も上下に振った。まわりから見られているのが恥ずかしくて、彼はあわててその手をほどいた。

(「あ、感じ悪かったかな」)

と一瞬した心配も、春に対しては無意味だったようで。

「あっごめんごめん!痛かった!?」

と、逆に心配されてしまう始末。

「わけわかんない。ついでだって言ったじゃん」
「それでもとにかく助かったよ~そうだ、お礼に明日何か持ってくよ!」
「い、いらねえよ!」

透夜はビク、と身を引いてから、じゃあねとそっけなく言って明るいスーパーの中に吸い込まれて行った。
春は自分を助けてくれた救世主が見えなくなるまで見ているつもりでいたのだけれど、振り返った透夜に睨まれたのであわてて歩き出した。