「それで、薬局にでも行って花粉症の薬買って飲んで、寝てなさいよ」

先生は何かの資料をぱらぱらとめくりながら、半ば投げやりに言った。透夜は軽く項垂れてから、はい…とかの鳴くような声で言って、立ち上がった。

「しつれいしまーす…」
「ほら、マスクマスク!」

騙されたと思って付けときなさいよ!いいわね!と怒り顔で渡されたら、受け取るしかない。

「あー、どうもっす」

へにゃ、と力なく微笑んでマスクをつけ、彼は保健室を出た。
涙は相変わらずだったのだけれど、クシャミはいくらか減った。透夜はそれに気を良くして、鼻歌交じりに美術準備室に戻って行った。

…まあ、実際には鼻が詰まっていたので鼻歌どころじゃなかったのだけれど。