薄暗い街灯だけが、行く先を照らす。
2人はかれこれ40分、線路沿いの道を歩き続けていた。

「坂井くん………」

春は恐る恐る透夜に声をかけた。
反応はない。

「ねえ!おい!」

何度目かの呼び掛けに、透夜がようやく反応を示した。

「……うるさい」
「どこまで行くつもり!?」
「……わかんないよ」
「わかんないって……」

触れられたままの手首が熱い。
直接触れられてるわけでもないのに、ヒリヒリと火傷したように感じる。

すでに春の頭の中には、「亜依ちゃんと谷原くん置いてきちゃったよ」という意識さえなかった。ただ自分を引っ張って少し前を歩く透夜を見るだけで精一杯で。

「坂井くん………」
「…………なに」
「………疲れた」
「はぁ!?」
「はぁ、じゃないよ!いきなり!いきなり歩こうとかなんとか言ってホントにもくもく歩いて!見なよ!」

春が指差す先には、『みつる台駅』が見えてきていた。3駅分も歩いてきた証拠だった。

「坂井くん家の駅だよっ!ねえ!」
「……もう夜なんだから、少し静かにしなよ」