「俺はデミグラスソースがいい」

また好き勝手言ってるサト。

「トマトケチャップでいーの!っとに注文の多い…」
「ちとせくん、ちとせくん」
「何?」
「コレ」



笑顔の葵が差し出したのは、グレープフルーツだった。
また黄色。

「ん…食べんの?」
「黄色、すき」

目をキラキラさせて俺を見る。

そーかー。
黄色なー………




………って、たんまたんま!!



「サト、葵とちょいここ居て」

俺は小走りにとなりの棚へと姿を隠した。

恥ずっ!
なんだあのキラキラ加減!


下の商品を見るふりをして、へなへなとしゃがみ込む。



………なんつーか…




汚れを知らない?
いや、過去にイロイロあったわけで、だから汚れを知らないって言うと変かもなんだけどさ。




つーか何か持って戻んないと…
不審がられるだろ、明らかに。

コーヒー豆とフィルターが切れていたのを思い出したから、それを手に戻る。

「コーヒーか…つかあのコーヒーマジで旨かったんだけど」
「あ、ああ……あれは旨いよな…ハハハ」

挙動不審な俺に疑問を持ったのか、サトがいぶかしげに俺を見た。あわてて目をそらす。




葵の手は、また俺の指を握った。