「………妹じゃねー…よな?」


嬉しそうにガラステーブルに着いて、ショートケーキを食べる葵をチラッと見て、サトはそう言った。


俺たちはテーブルから離れた場所にあるソファーに向かい合って座っていた。
ソファーの間には、向こうとお揃いのガラスのローテーブル。その上に、モンブランとレアチーズ、二杯のコーヒー。


「んあ、違うよ」
「…え、ちょい待ち…え?」
「あー…順番に話すよ。訊けよ、遠慮はいらねーよ?」



サトはまず、なんでこんなところに住んでんだ?と尋ねてきた。

そこで俺は、過去を全部話した。

サトになら、話して良いと思ったし、別に俺は気にしてないから。

親のこと、じいちゃん、ばあちゃんのこと、マンションの5ヶ月ローンのこと、それから、遺産暮らしってことまで、包み隠さず。


「………悪ィ…俺、余計なこと?」
「気にすんなよー。俺が針の先ほども気にしてねーのに」

ヘラヘラ笑って言うと、がっくりと肩を落として言われた。

「…多少は気にしろよ…」

そーかな?



「他には?」



ものすごく言いにくそうに、でもやっぱり気になるといった様子でサトが口を開いた。

「………あの子は?」





………ここで親戚とか、適当にごまかすことは簡単だ。
だけど、それじゃ嘘をつくことになる。
せっかくサトが聞いてくれようとしてるのに、水を差すようなことはしたくなかった。

俺、けっこコイツのこと好きだからさ~、なんだかんだ。

嘘は、言えない。
言えるわけない。



頭をガシガシ掻きながら、切り出す。

「………長くなるけど?」
「ああ」