「なんだよ、悪かったって」

機嫌が悪いのは俺が葵のことを黙っていたせいだと思い当って、だから、ムスッとした顔の親友をなだめるように言う。

サトは気にくわなそうに天井を見上げ、やがて俺に視線を戻した。


「…だってさぁ、俺親友なんだろー?
今まで黙ってて、急に…」

「だから事情があったんだってば」

「事情、なぁ……」



葵にはイチゴのショートケーキ、自分にはレアチーズ。

たった3つで2400円。


「げ、高くね?」


レジの表示を見たサトが、驚きで目を見開いた。


「あー、まぁ。こんなもんじゃね?」


細かいのがなかったから、金色のカードを1枚抜き出して、払う。


サトがさらに驚いた顔をしたので、どーした?と訊くと、


「なんで学生でゴールドカードなんか……!」



遺産暮らしだってまだ教えてなかったから、驚くのも当然かもしれなかった。

俺は隠すつもりなんかなかったけど、それでも、わざわざ話すことでもないかな、とか。

親がいないこともちゃんと話した覚えはないし、なんだかんだ、俺はサトに話していないことがたくさんあるんだなとぼんやりと思った。