「さ、行くか!葵」


俺は葵の右手を強く握って、それから彼女を見て笑って見せた。

葵の目にはまだ少しだけおびえの色が見えたけれど、それでも俺につられて、微笑んで見せてくれた。


「これから、ずっと、俺の家にいていいんだからな」

「うん?」

「夕飯の買い物行かなくちゃいけないなー。もう朝昼晩買い食いってわけにもいかないし。何か食べたいもんある?」

「うん?」


俺が一方的に話すばかりで、葵にはたぶん何一つ本当の意味では通じていないのだろうけど、それでも俺は話すのをやめなかった。


たくさん話しかけることで、葵に言葉を教えようと必死だったんだ。




今はまだ、わからなくてもいい。

だって、
時間はいくらでもあるんだからさ。