「あー、君が噂のちとせ君ね」 「……噂のちとせです」 さっちゃん、俺の何を話してるんだよここで。そんなふうに激しく不安になる。 あることないこと、こんな離れた町でも噂が広まったりなんかしたら、…いや、実害はないだろうけど、気分悪いじゃん。 「廊下の突き当たりよ、やまぶきの部屋」 「ありがとうございます」 会釈をしてから行くよ、と葵に声をかけて、手を引いた。