というか、なんだってこんなのどかな田舎道を、せかせか走らなきゃいけないんだろう。
暑い。
汗かくの、嫌いなのに。


緑色が目に鮮やかな田圃やら、綺麗な声で鳴く小鳥。
頬をなでる風はさわやかで、夏の訪れを告げている。

で、ひた走る俺。
ああ、バカバカしい…



「のど渇いたー…」
「かわいた?」
「カラカラ…」
「からから?」


どうして分からないんだろう。
喉が渇いた、この感情や感覚さえも、葵にはないのかな。
それとも、表現の方法を知らないだけなのだろうか。


だとしたら、それはなぜ?




知りたいから、ここに来たんだ。
さっちゃんに、意見を求めに。

俺のことだ、電話じゃきっとうまくせつめいできないだろうから。