「ぅわ……っとと…」


バランスを崩して、転びそうになった。


「………っぶね~――…」

「あたし、あの…ごめんなさい……」

「や、俺が鈍かっただけ」

木彫り殺しのカンも鈍ったてところかな。


葵が俺を見上げていた。

「ん?どした葵」
「葵ちゃんかぁ!!ふーん、名前で呼ぶ関係スか?」
「トオルうるさい」


葵は何かを言いたそうだった。

でも、何を言いたいのかまではわからなかった。


うやむやになった握手をなゆちゃんが頼みたがっているのは気付いたけどな。


でもさ、俺なんてただのガキだ。

握手を求められるような存在じゃない。
そんな存在で居たくない。
普通でいい。

親がいないことが、親に捨てられたって過去が、もう十分普通じゃないんだから。





──特殊なんて、欲しくない。