「ちとせさん、騒がしくてすみません」
「ま、いいよ。美佐ほどじゃないし」

そう言って笑った。


トオルは葵と、繋いだままの手を見てから訊いてきた。

「この儚げーな可愛い子は?」

「あー、……えーっと」

「やっぱ浮気っすか?

あやしいっスよ」

ニヤニヤ笑うのやめろよ。

殴ってやろうかと思ったけど、止めておいた。葵が怯えるかもわかんねーし。


「こんにちは~」


親しげに挨拶をするトオル。
でも、葵は答えなかった。

「?」

「ごめん、人見知り激しくて」

「あ~、そうなんスか」

「あの!」


なゆちゃんが突然口を開いた。


「へ?」

「あ、あ、あの……握手!
握手してください!」

「……あくしゅ?」

あくしゅて……シェイクハンド?


「あー」


左手を差し出した。
右手はまだ、繋いだまま。
不安定な車内で何にも掴まらないのはなんとも心許ない。

そんでさ、そーゆー時に限って大きく揺れるんだよな。