やっとの思いで階段を降りきると、エントランスの自動ドアを抜けた。


「やべえ、マジで暑っちぃ……」

出かけたくねぇえ…



大通りは、真っ昼間ということもあってか、たくさんの人が行き交っていた。



それに加えて車の行きかう音。

排気ガスで濁る空気。



ビルとビルの間ので光が反射しあって、空気が高温になってるらしい。

もうなんていうか、世界全部がゆらゆらしている気がしてならない。




7年間土の下で辛抱していたセミたちが、表に出ていられるわずか1週間ちょっとの間はせめて精いっぱい騒げ!とでもいうかのように、やかましく鳴いている。


気持ちは分からないでもないけど、もうすこしボリューム落としてください。




学校サボってんのか、フケたのか、制服姿の金髪茶髪、昼休み中らしいOL、額の汗を拭いながら忙しそうにサマースーツで動き回ってる大人たち。


葵はそれらを見て、幾分驚いていた。

人ごみに慣れてないのかも知れない。