母親と暮らすようになったのは、去年の春からだ。
ちょうど1年経ったことになる。

精神病院に入院していた母に再会したのは、秋口だった。
俺の姿を見た瞬間気絶し、目が覚めたとき、記憶の一部分が抜ける形ではあったが、日常生活を送れるくらいの状態になっていた。


抜け落ちたのは、自分の夫と真央の父親との間に起きた恐ろしい出来事の記憶。


都合よすぎるだろう、とは思った。
だって目が覚めた瞬間、俺に言った言葉は

「ちとせ、宿題終わったの!?」

だったんだから。






担当医師の話によると、俺の母親は俺が小さいころから今日にいたるまで、ずっと一緒に生活してきたと認知した、らしい。

夫とは死別した、程度の認識。


自分の精神を守るために、彼女の心が彼女を守った結果だ。