ハコイリムスメ。




冷やし中華を4人とも食べ終わって、洗い物が片付いたころ、葵が昨日の個展の話をしてくれた。


「礼次郎さんの知り合いの画家さんとかね、礼次郎さんのお友達とかにね、紹介してもらってね、絵も褒めてもらったんだよ」

「そうか、よかったな」

「うん、それでね、一般のお客さんもたくさん来ててね、あ、里奈ちゃんたちも来たんだよ」

「へえ」

「会場も結構広くてさ、なんか俺絵ってよくわかんねえけど、あの人の絵はなんかいいよ」


葵の話に付け足すように、サトも俺に話す。


「また一緒にやろうって、礼次郎さんが言ってくれたの!」

「すげーじゃん、よかったな」


俺が葵の頭をなでながら言うと、彼女はうれしそうに笑った。


「ねーちとせー、アイスないのー」

「たぶん冷凍庫に…って、さっちゃんまだ食うの?腹壊すよ」

「なーに言ってんのよ、平気よ平気」


さっちゃんは読んでいた雑誌を閉じると、冷蔵庫を見に行った。




こんな平凡な時間が、ああ、なんだかすごく幸せだったんだなと、思う。



でも、時間は待ってはくれない。

夜になって、サトが帰って、俺は葵に言おうと決めた。