「ちとせ……」


さっちゃんの心配そうな声が聞こえた。
俺は1人泣きながら、それでも床を殴り続けていた。



一緒にいたい。

今まで通りでいたい。



ただそれだけなのに、どうして叶わないんだろう?






「……俺さ、そんな話聞きたくなかったよ、さっちゃん」

「……そうね」

「葵は、大丈夫かな……」

「きっと、大丈夫よ」




さっちゃんの声がいつもより穏やかに聞こえたのは、きっと気のせいなんかじゃない。


俺は穴の開いたドアをあけて、部屋から出た。さっちゃんが子供をあやすように俺を抱きしめて、背中をさすった。されるがままにしておいた。