さっちゃんは俺に言った。

葵と暮らすのはもう終わりだと。





ドア越しにさっちゃんの声が淡々と聞こえてきた。


「ちとせ、聞いて。葵ちゃん、ううん、真央ちゃんに戸籍が出来るの。お父さんは逮捕されたし、お母さんも、刑期は短いながらに、罪を償わなくちゃいけない」


父親は殺人犯、母親は夫の殺人を通報しなかったせいで共犯扱いになっていると聞かされてはいた。

母親のほうは精神的肉体的に暴力を受けていたことが考慮され、鑑定や捜査の結果、減刑が決まったらしい。


「未成年の彼女は、施設に行くことが決まったの」

「じゃあ俺はなんなんだよ!俺だって親がいないで1人で……」

「あんたはまた別よ!お金も住むところも困らないじゃない!」

「葵と今まで通り、暮らせない理由にはならねえだろ!」

「あんただって未成年なのよ!」




つまり、俺が子供だからいけないのか。

俺が子供なばっかりに、大切な1人を守れないのか。




「ぁぁあああー!ちくしょぉおお!」




ドアを殴った。
ばきっと不吉な音がして、木の扉に穴が開いた。