俺の目線を辿って、さっちゃんも自動ドアの方を振り返った。


「え……ちとせのお母さん……?」

「ハハハ…違うよ」


そうか、さっちゃんは昔俺の両親に会ったことがあったんだった。やっぱり見間違えるほどに似ているってことなんだな。


「葵の母さんは、俺の母親の妹らしいんだ」

「はあ?」


葵が俺の背中に回していた腕を解いて、オドオドと振り返った。
葵の母さんは葵を見て目を見開き、けれど娘を抱きしめられず、ただ涙を流した。


「……ちとせ、くん、私この人知ってる…」


葵は俺の後ろで小さく声を上げた。

俺は葵の母親に、今日はダメだとはっきりと唇を動かして告げた、会わせる訳にはいかない、と。彼女は頷いた。


「サト、悪い。先に家行ってて」


俺はサトの返事を待たずに、さっちゃんと葵の母親と連れだって、自動ドアをくぐった。