それから小1時間ほどたったころ、葵が目を覚ました。


「あ、目ー覚めた?」


葵はまだ眠たそうに眼をこすった後、俺を見てから、不思議そうにサトを見た。


「あれ、…サトくんがいるー?」

「おじゃましてまーす」


サトがパタパタと手を振った。
葵はあくびをしてから、うん、と返事をして、唐突に俺に油絵の具じゃなくて、水彩画にしちゃったの、と告げた。


「え?」

「油絵の具って乾くのがすごく遅いらしいの。5日とか6日とか開けなくちゃいけなくて…それじゃあ間に合わないかなあって」

「どこでそんなこと知ったんだ」

「この間、一緒に買った本に載ってたよ」

「葵、お前もう漢字読めて…?」

「うん、ある程度なら読めるよ」

「礼次郎さんに言ってないだろ?」

「ううん、私電話で訊いたの」


サトは俺たちの会話になんだなんだと首をかしげて、俺は次々に飛び出す予想外の言葉に目を白黒させていた。


「礼次郎さんの電話番号、私の携帯電話に登録してもらったからね、それで、書きだす前に訊いたの。画用紙は、前にサトくんと買い物に行ったときに買ってもらった大きなのを使ってね」