一週間後、葵がようやく部屋から出てきた。

というか、ようやく俺とまともに顔を合わせた。



「ちとせくん……描けた」



葵は俺に向かって満足げにそう言ったあと、ぐったりとソファーに倒れ込んで眠った。

俺は苦笑しながら葵にタオルケットをかけて、それから礼次郎さんに連絡をとった。


コール音を3つ数えたところで、礼次郎さんが出た。


「あ、もしもし谷神ですけどご無沙汰してます」

『おお谷神君、それじゃあ間に合ったんだね?』

「はい、今描き終えたらしくて。本人はぐったり眠ってますけど」

『そうか、じゃあ谷神君、日向君と午後の適当な時間に搬入に来てもらえるかな。午後5時までならいつでも大丈夫だから』

「わかりました」


礼次郎さんは個展会場までの簡単な道順を口頭で説明した後、気をつけていらっしゃい、と電話口でやわらかく言った。