「………へえ。それで、葵ちゃんは家に着くまで目を覚まさなかったの?」

「うん、そう。つーか、今朝まで起きなかった。すげえへんな倒れ方だったから、俺よっぽど救急車呼ぼうかと思ったんだけど」

「……そうね…」


さっちゃんは椅子をくるりと回して、俺の方に向きなおった。


「……まあいいわ、とりあえず、今日は忙しいんでしょう。早く出発した方がいいんじゃない?」









俺たちはあのショッピングモールに行く前に、さっちゃんの所に来ていた。

例によって葵にはロビーで待ってもらって、俺はさっちゃんと2人で話をしていた。
礼次郎さんのことや個展のことを楽しげに聴いていたさっちゃんも、昨日の葵のことについて話すと、顔を曇らせた。







「ああ、そーだなあ。うん、そうすっかな。じゃあまた近いうちに葵と来るから、さっちゃんもたまには家に来いよな」


じゃあ、と言って俺がドアから出て行こうとすると、呼び止められた。


「ちとせ」

「ん?なに」

「あんたもわかってると思うけど…葵ちゃんは不安定なんだからね。ちゃんと守ってあげないとだめよ」

「イマサラ何言ってんだよ。わかってるって」