「え、ちょ………あお、い?」

俺は彼女を支えたまま道路に片膝をつくようにしゃがみ込んだ。

変な時間だからなのか、人通りのない道。




俺たちだけがどこか別の世界に飛ばされてしまったかのような錯覚を覚えた。




葵の首筋に触れると、確かな脈を感じてとりあえずほっと息をついた。

気絶なのか眠ってしまったのか区別はつかないけれど、とにかく葵が離れたがったここにいつまでもいるのもよくないと思って、よいしょ、と小さく声を出しながら抱き上げた。


キャンバスを抱えるのはほとんど不可能だったけれどどうにか指先にひっかけるようにしてつまみあげ、俺は駅に向かって歩いた。