ハコイリムスメ。

「わざわざ申し訳ないね」

俺が差し出した紙袋を受けとると、礼次郎さんはすごく嬉しそうに微笑んだ。
そして、こっちだよと俺たちを部屋に通した。


エアコンが効いたダイニングキッチンは、清潔感溢れる白と水色と薄い緑で統一されていた。


「散らかっていてすまないね」


礼次郎さんは水ようかんを冷蔵庫にしまいながら言った。
葵が普段見慣れないキッチンを目の前にして、キョロキョロと辺りを見渡していた。

「ちとせくん、見て」

葵が指差す先には、大きな水槽があった。色とりどりの小さな熱帯魚が優雅に泳いでいる。

「おさかな、綺麗だね?」
「ウン」


名前も知らない小さな魚が、水槽の中っていう小さな世界でふわりふわりと飛ぶように。
俺たちは並んで水槽を見つめながら、しばらく時間を忘れていた。