ハコイリムスメ。


「1階は普通に生活できるようにしているんだ。絵を描いているのは2階。それから、3階は最近始めた絵の講習会の教室の代わりとして使っている。今日君たちを通すのは1階と2階。いいかね?」

「はい、なんだか無理言ったみたいですみません」

「無理だなんてとんでもないよ。暑かったろう、とりあえず何か冷たいものでも飲みながら、話をするとしようか」


葵は俺たちが簡単な挨拶をしている間、そわそわと玄関のステンドグラスから差し込む光を見つめていた。
色とりどりのその光は、玄関の毛足の長い白いマットに映って、やわらかな表情を見せていて、それだけで1枚の絵のようにさえ見えた。


「ああ、そうだ……礼次郎さん、お土産です」


俺はふと思い出して、夕べ作った水ようかんを差し出した。
作ったと言っても、大して手の込んだものではないけれど。